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2018年 08月 27日 ( 1 )

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陽が傾き始めた頃、小屋の中のテーブルの上には、沢山の書類。それをまとめてクリップで止めて、相手に差し出すスーツ姿の男は銀行員。古いソファに向かいあって座っているのは癖っ毛で丸いメガネをかけた中年の男。彼は、老舗のサーカス団の団長。
「やはり、どうにもならないかね。」「はい、何度も申し上げていますが、これ以上の融資のお話は難しいです。傷が深くならないうちに、団員の方や、動物達のことをこれを見てよくお考えになって下さい。では。」淡々とそう言って立ち上がった。
「いや、そこを、どうにか!この町での興行はきっとお客さんがたくさん来るはずなんだ。」引き止めるように段々と声が大きくなる相手の言葉を振り切り、ため息をついて皮のカバンを持ち上げ、小屋を出た。
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町の中心街から少し離れた広場にこのサーカス団がやってきて、1週間。一向に満員御礼になる気配はない。銀行員は団長の小屋から少し歩きだすと、腰掛けに丁度いい小道具のカラフルな木箱があったので、腰をおろしてポケットからタバコを出して吸おうとしたら、「ここは火気厳禁です。」背後から若い男の声がする。銀行員は「おっと。すまない。」慌てて火を消した。若者は続けて、「ここで火事なんか出すわけにはいかないので。」頷きながら銀行員は「そうだよな。すまなかった。きみは団員か。」「はい。まだ見習いですが。バートといいます。」「おれはジャック。パークヒルズ銀行の融資係。つまりは金貸し担当。別名、金貸さない担当、とも言うがな。悪いことは言わないから、早く転職した方がいい。」「えっ?」バートは練習に投げ上げては受け止めていたジャグリングの輪っかを地面に全部落とす。ジャック「つぶれるぞ。このサーカス団。給料出るうちに辞めとけ。」「ジャックさん、それ、本当ですか?」「ああ。さんは要らない。」ジャックはバートが落とした輪っかを拾いながら、流れてきた楽しげな音楽に「夕方の公演、もうすぐなのに、なにやってんだ?」わざと話を変えた。バートはジャックから輪っかを受け取って「あ、ありがとうございます。僕は、まだまだお客さんの前には出られないんで。」「そんな感じだな。」ジャックは笑った。「さ、さっき落としたのは、あなたが驚かせたから、リングを落としただけで、本当はちゃんとできる。」少々気を悪くしてるようなバートにジャックは「わかったわかった。」片手を上げ軽く頭を下げた。
バートは練習を再開して、「僕は一年前にここに来たので。みんな大抵、もっと小さい頃から技を練習するんだ。だから、ステージに立ってる子には僕より若い子は何人もいるよ。」「そういう事情か。しかしまたなんでサーカスなんかに。」ジャックは少しイラついた様子で腕組みをした。バートは道具を全部上手に捕まえると、うでに引っ掛け、ポケットから、キャンディの缶を出して、ジャックに渡した。「おおっ。」バートは肩をすくめる。バート「タバコ、吸えないから、口さみしいのでしょう?」「気がきくな。大正解。この仕事、結構消耗するんだ。」ジャックはコロリと缶からキャンディを出して口へ放り込んだ。二人の耳に音楽が速いテンポのものに変わったのがわかった。いよいよ、開演。バートはジャックが差し出すキャンディ缶を受け取り「あと5分くらいで始まりますよ。見ていきます?」ジャックは首を横に振り、「いや、見ない。じゃあな。キャンディ、ありがとうな。」サーカステントの入り口前のゲートから、サッサと出て行った。

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by kigaruni_eokaku | 2018-08-27 14:20 | 物語 | Comments(2)

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