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明日のチケット(第77話)雪雲劇場2

「見事な歌と演奏を聴かせて頂いて、ありがとう。さっきのあの歌を好きな2人に、私からはなにも言うことはありません。」そこで一旦黙ったジムに、マーメイドが「そんなこと言わずに!何か言ってー。」マイクなしの声でも十分響き渡る。団員たちから少し笑いが出て、ジムも気を取り直し、ちょっと笑ってから「ただ好きだ、一緒にいたら幸せになれるに決まっているとだけ、安易に考えているわけでなく、二人が、いつか、いや、すぐにでも何度も来るかもしれない試練を見据えて、自分たちらしく乗り越えて、いっそう絆を深める覚悟と希望があることが、私には伝わった。おめでとう。末永くお幸せに、そんなこと言わなくていいくらいのお似合いの二人だ。」挨拶をおえると、マーメイドが「ありがとうー!!ジムに拍手ー!!」まるで、公演の時のように言って、しんみりムードを吹き飛ばした。
アンドリューの所属する団の女性の団員から、「ねー!ブーケトスはないの?」とのリクエストにアンドリューが、マーメイドを見ると「もちろん。この幸せ、次に続くのは誰かしら。まだ、結婚してない、みなさーん、はーい、集まって集まって。」女性達が集う。マーメイドが後ろ向きに立って、「そーれっと!」みんなが声と手を上げた。放物線を描いてブーケが飛んで、「えーー!」受け取った、というより、落下したのは、女性たちがいたところより少し外れたバートの所で、職業柄、反射的に受け取ってしまったので、女性たちはブーイング。「ぼ、僕?!取っちゃって、ごめんなさい。もう一回投げ直す?」マーメイドに差し出したけれど、「あのね、バート、結婚に、もう一回とか、縁起悪いから。やらないわよ。あなたが受けちゃったんだから、あなたのものよ。」「あなたの物、って言われてもなぁ。」バートが申し訳なさそうに手にしたブーケを見つめる。ソフィアがからかって「花嫁になる?」「あげるよ、ソフィアに。」ソフィアに渡そうとしたら「嫌よ。なんか、すでにご利益なさそうだもん。」「仕方ないなぁー。」バートがアンドリューとマーメイドの方に向き直り「なんか、僕じゃない人が受け取るべきだったとは思うけど、ちゃんと大事にします。」そう言うとアンドリューが「誰が取ったって、幸せになれるから。幸せのお裾分けだから。遠慮なく受け取ってください。」彼の人柄が伝わるアンドリューの言葉に、バートはやっといつもの笑顔になり、「はい、ありがとうございます。お幸せに。」うんと深く頷いて笑みを浮かべたアンドリューをマーメイドが幸せそうに見つめていた。パーティーは、みんながずっと続いたらいいのにと感じるほど、幸せいっぱいの和やかな時間だったが、ワンダーランドサーカスの面々は今日が千秋楽だが、アンドリューの仲間たちはみんな明日も仕事があるので、夜行バスで戻らねばならず、お開きとなった。
片付けは、全員が手伝って、あっという間に、いつものテントに戻った。ジムが、「アンドリュー、私からもお礼の連絡はするが、帰ったらギルバートの団長にくれぐれもよろしく伝えてくれよ。」「はい。伝えます。」笑みで頷いた。「マーメイドは、次の移動先で、合流させたらいいから、一緒に行くといいよ。」ジムが言うと、アンドリューは驚いて、「えっ?」マーメイドはニヤリとして、「実はぁ、私のお道具は、もう、先に送ってあって、トランクルームにあずけてあるの。だから、ついて行くわよ。」腕を組んだ。ケイトが歩み寄って、「ゆっくり公演を観て、楽しんで来てね、マーメイド。旦那様の晴れ姿。」「うん。ありがとう、ケイト。」ハグをしてケイトに感謝した。
片付けが終わって、ゲート近くのベンチで休んでいたバートに、ジャックが「おつかれさん。ちょっと付き合えよ。」ゲートの外を指差した。

by kigaruni_eokaku | 2019-06-21 21:06 | 物語 | Comments(0)

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