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明日のチケット(第65話)雪雲劇場2

「あの、ミカエルさん、これ、いくらお支払いすればいいですか?って今は持ってないんですけど・・・。」ソフィアが申し訳なさそうに笑うと、「要らない。試作品だし。」「そんな・・、材料費とか、色々お金かかりました・・・よね?」おずおずと言うソフィアに「まぁ、それなりに。でも、これが完成したら店で新商品として売り出せば君に作った分くらい即回収できるから気にするな。」「ミカエルさん・・。」優しい顔もしないし、終始ストレートな物言いだけど、この人は実のところ誠実な人なんだと感じたソフィアはゆっくりと笑みになり「ありがとうございます。」頷いた。その顔を見たミカエルもちょっと口角を上げた。「こんにちは、サーカスのファンの方ですか。いつも応援していただいてありがとうございます。」ジャックがやって来てミカエルにいかにも人当たりが良い口調と笑顔で声をかけると、ミカエルはいつもの顔に戻って「おれは、サーカスのファンじゃない。」「ファンじゃ、ない?」「ああ。彼女とちょっとした知り合いなだけだ。サーカスは見たことないし、用が済んだから、もう帰るところだ。」「知り合いって?」ジャックはソフィアの方を見る。「ああ・・・、その・・。」ソフィアは口ごもった。出来ればもっといい感じのシュチュエーションでジャックを驚かせるなり、喜ばせるなりしたかったからだった。解せないジャックは二人を交互に見て、ミカエルと目が合うと「あ〜そうか。」ミカエルがつぶやく。「何ですか?」中途半端に笑顔が残ったような表情をしたジャックが首を傾げてたずねる。「おれは彼女の知り合いでもあるが、それより先にバートの知り合いだ。サーカスで彼が売ってるキャンディーを作ってるのはおれだ。」「えっ?あっ?えっ?ダニエルの店にあるこのキャンディーも、ですよね?」ジャックがペンや財布を入れているウエストポーチから、いつも自分が持っている例のセロファンに包まれた小さいキャンディーを出して見せた「そう。なんだ、あんた、買ってくれたんだ、ありがとう。」「あ、まぁ・・・はい。そのあなたがどうしてバートじゃなくてソフィアと?」いよいよ笑顔がなくなるがミカエルは全く動じず「なんでおれと話していたかは、あとで彼女に聞け。じゃあ。」行こうとするミカエルにソフィアが声を張り「うちのサーカス、見たことないんですよね?」「ああ、ない。興味もない。」数歩歩き出すミカエルの前に回り込み、「そんなこと言わないで、せっかくですから、今日はイベントを見て行ってください!」食い下がると、ジャックも目を覚ましたような顔をして、「お時間、ありませんか?ご覧になって行かれませんか?」ミカエルは面倒くさそうに二人を見た。広場に流れる音楽が変わって、バートとマックスがほかの団員たちと一緒にお客さんに手拍子を促し始めた。ジャックがさっきはちょっととがっていた表情をすっかりやわらかくして、「私も、サーカス、全っく興味なかったんですが、バートと知り合って、一度観てから考え方が変わりました。」その言葉に驚いたミカエルが「って、あんたはサーカスでなんかパフォーマンスをする人じゃないのか。」「事務方です。」「事務方?」「とにかく、もう始まりますから、このまま、観ていきましょう。」「おい・・・!」ジャックはミカエルをわざと出にくいように続々と集まる見物客の隙間へと誘導した。「どうもー!みなさん、こんにちは!」マイクを手にしたマックスがお客さんにスタートの挨拶を始めた。「わたくし、このワンダーランドサーカスでピエロをやっております、マックスといいまーす!いつもはカツラやメイキャップ、派手な衣装という出で立ちなので、今日はこの通りシンプル過ぎて、なんだか何も着ていないみたいで恥ずかしいです。」取り囲むお客さんからは笑いが起こる。その笑顔を見ながらトコトコと歩いて、お客さんに目一杯愛想を振りまくマックス。「ワンダーランドサーカスも、この土地の皆様に可愛がって頂いてまいりましたが、いよいよ千秋楽の日が決まりました。あと少しです。」大きなポスターを持ったティムが出て来てマックスと一緒にお客さんに見えるように、ついて歩く。「今から始まるイベントも勿論ですが、公園にある大テントでやってます方もどうか、どうか、お見逃しなく!一度観た方も、まだの方もお見逃しなく!!」言うやいなや音楽が変わって、マックスはくるくると側転、高さのある前転などをやってのけ、ティムもポスターを端にいた女性団員に渡すと一緒のことをしてお客さんを沸かせた。
by kigaruni_eokaku | 2019-04-14 07:31 | 物語 | Comments(0)

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