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明日のチケット(第63話)雪雲劇場2

イベントの日になり、メンバー全員が新調したおそろいのTシャツにブルージーンズを着て、事前に告知した駅近くの広場に集まった。バートとソフィア、ダン、マックスを始めとするメンバーは千秋楽告知、エディー、ディアナ夫妻とマーメイドたちのチームは新しい町での初日告知に現地に出かけていた。銀行での残務を終えてサーカスに本格的に合わせた動きになったジャックは、バートたちのチームを手伝いがてら見に来ていた。手慣れた様子のティムやほかの子供達が一緒に道具を運び並べる。
ソフィアは犬たちと息を合わせるべく、準備運動みたいなことをしている。犬たちに話しかけたり、小さな命令をしては従わせ、出来たら褒めることを繰り返していた。本番の段取りに近づけつつ。「すごいな。」ジャックが感心してソフィアに言うと、「えっ?」「プロの顔してる。」頷いて真顔のジャックにソフィアは「一応、これでも、プロなんで。見てて。」パッと手のひらを広げると犬たちは三匹とも並んで、同じタイミングできれいにお座りした。「ほんとだ。」感心顔から、すっかりお客さんの立場のようになったジャックが拍手をした。「待って。拍手はまだ、早いです。演技を全て失敗しないでお見せ出来たら、拍手をお願いします。」「あ、ごめん。失礼しました。」ジャックが恐縮すると、ソフィアが笑って「なーんて、偉そうなこと言ってるけど、お客さんが拍手してくれるかどうか分からないから、お客さんが拍手しやすいように、先に拍手してお客さんの拍手を引っ張り出して。お願い。」可愛くちょっと舌を出した。「お易いご用だ。任せとけ。」顔を見合わせて笑う。
「バート、何よそ見してるんだ、早く準備しろ手が止まってるぞ。」マックスに後ろ頭を軽くはたかれる。「痛っ。ごめん」なんとなくさっきバートが見ていた方に目をやったマックスが「あれ?なんだよ、あの2人、なーんかいい感じだな。」ソフィアとジャックを見てふと呟く。「だよね。」バートが手を動かしながらニコニコすると、「けど、厚かましいな、ジャック。あいつは歳はいくつだよ。」少し憎たらしそうに言うマックスにバートが「そういうマックスもさ、ガーネットは随分歳下だと思うけど?」マックスの妻、ガーネットは看護師で、サーカスが行く町々の病院に公演期間中勤める契約をして働いている。「う、うちはたった、8つだ。大したことないだろう?」喋りながら歩いて、バートからすこし離れた所にある箱を開けに行く。「たった?」バートが笑いながら「8つも10も、もう、変わんないと思う。」そう言っていたずらして手に持っていた小道具をマックスに投げると、「生意気言うな!まだまだ子供のくせに!」飛んできた物を見事に受け止めると、すぐにサイドスローでバートに投げ返すと、今度はバートが一旦それを足に当てて向きを変えてからキャッチした。「おーー!」告知のチラシを手に集まり始めていた幾人かのお客さんから声が上がる。二人は小競り合いを思わぬ観客に見られて、照れ隠しに笑って会釈した。
ティムが大きなラジカセを持ってきて音楽を流し始めた。「二人、何やってんの?あそんでないでちゃんとしてよ。」「申し訳ございません!」音楽に負けないように大きな声で二人が謝ると、「これだから、大人は困っちゃうんだよな。」アゴを上げて二人を指差してから、軽々と片手側転やバック転をやってみせると「よぉー!お兄ちゃん!クールだねー!」マックスが口笛を吹いた。
見物客は続々と集まり始めていた。

by kigaruni_eokaku | 2019-04-07 21:45 | 物語 | Comments(0)

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