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明日のチケット(第61話)雪雲劇場2

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ジムが気を利かせて「じゃ、私は行くから。」アンドリューにそう言うとマーメイドが「団長?なんでアンドリューと?」「そんな事はどうでもいいいから、ゆっくりお茶して帰ってくればいい。」アンドリューに目配せするとテントに方向に戻って行った。
「アンドリュー、あなたも公演中なのにどうしてここまで?」「ああ・・・、でも今日は休みだから。君に話があって来た。」緊張している様子のアンドリューとは対照的にマーメイドは、美容院に行ったばかりの自分の姿をコンパクトミラーを開けて映してみては右に左に顔を動かしてみたり髪を触ってみたりとリラックス状態。「少し前に言ったことだけど・・・。」「え?なぁに?」「僕と結婚して欲しいって話。」マーメイドはミラーを閉じると「それなら、うちのサーカスが困るからダメだって言ったでしょう?」長い睫毛の目をパチパチして肩をすくめる。「それが理由なら、僕のことは、嫌いじゃないってことだよね?」「ええ。あなたのことは好きよ。」アンドリューは数秒言葉を発せずいた後に「その好きって・・?」「好きは好きよ、それ以外何かある?」「それなら、僕と、その・・・。」マーメイドは小さいため息をついてから「あのね、あなたが自分のサーカスに出勤するのを見送って、おうちを掃除したり、テレビを見たり、近所の奥様たちとおしゃべりしたりして、あなたが帰って来るまでに食事の支度をしてお帰りなさいって、毎日それだけをやっている自分、想像できない。」首を横に動かす。好きと言われてさっきは喜びかけたアンドリューがしょんぼりする。「でも、あなたが言う結婚って、そういうことでしょう?」「うん、まぁね・・。」寂しそうな顔でマーメイドを見るアンドリューに「私はサーカスの華々しい雰囲気の中で、お客様に拍手をもらっている時の自分が一番好き。パパもそんな私が好きだったし。」「僕だってそうだ。マーメイドのサーカスでの姿を見るのは楽しいし好きだよ。」アンドリューがマーメイドが話し終わるかどうかくらいの勢いで言う。「そう?ありがとう。ねぇ、あなたの思っている、いわゆるふつうの結婚じゃないと、ダメなのかしら?」「どういうこと?」アンドリューが首を傾ける。「それぞれ今のまま働きながらの結婚じゃ、いけないのかしら?」「えっ・・・?」「そりゃあ、遠くの街に離れてる時は仕方ないけど、ある程度近くにいるときは一緒に住むとか、会いに行くとか、そんなのはダメ?」「マーメイド・・?」「もちろん、私はモテるから、時々は誰かとお酒を飲んだりするかもしれないし、たまにはときめいちゃうかもしれないけど、そのくらいは許してくれる?」アンドリューは苦い薬を飲んだような顔をして、ボソッと呟く。「あんまり許したくないんだけど・・・。」「さっき私のサーカスでの姿、好きって言ってくれたけど、私もあなたのバイオリンの演奏はすごく好きよ。包み込まれるみたいだもの。ただー、あなたといると、私はほっこりしちゃうのよね。ときめくというより。」マーメイドはちょっと口をとがらせ、空を仰ぐ。「ほっこりじゃ、いけないのか?悪くないと思うけど。」空を見ていた目線をまたアンドリューに向けて、「あなたはいつも私にときめいているでしょう?羨ましいわ。」「マーメイドっ」スツールから立ち上がって、アンドリューがマーメイドの腕を引張って、彼女も椅子から滑り、立ち上がらせる。「何するのよ。」驚いて少し憮然としているマーメイドに「ずっとときめいていたら、身体に悪いから!僕と居たら、きみはきっと長生きできる。だから、結婚しよう、マーメイド。」「全く。地味なアピールねぇ。とりあえず、今夜、二人で飲みに行きましょうよ。高速夜行バスを予約しなさい。」上目遣いでアンドリューを見て微笑した。アンドリューは、込み上げてきた笑いをこらえながら、照れ臭そうに「ああ、わかったよ。」そう答えると、両手のひらでマーメイドの頰を持つとキスしようとして、やめて手を放し、抱きしめた。「なんだ、キスしてくれないの?」「あ、いや、ドラマや、映画じゃないんだから許可を得ずにしちゃいけないと、思って。」苦笑いすると、こともなげにマーメイドが「べつにいいのに、あ」そう言うとアンドリューはマーメイドをはなして、「べつにいいって、まさか、誰とでもこんな感じって訳じゃないよね?」「人の話は最後まで聞くものよ。アンドリュー。べつにいいのに、あなたなら、って言おうとしたのに。」アンドリューは幸せそうにマーメイドを見つめて何度もキスをした。

by kigaruni_eokaku | 2019-03-29 21:32 | 物語 | Comments(0)

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