気軽に始めるイラスト!楽しもう~

kigarunieo.exblog.jp
ブログトップ

明日のチケット(第40話)雪雲劇場2

b0314689_18042500.jpeg
「分かってやれなくて、ごめんな。頼りがいのない男で。」ステファニーは黙って首を横に振り「私こそ、可愛くない女だったね、ごめん。」「もっと適当にやればいいんだ。お前が一番苦手なことかもしれないけど。」ダニエルが「話し中悪いが、とりあえず、食ったらどうだ。冷めたらまずくなる。」ステファニーが苦笑いして「そうだね、ジャック、食べよう。」「ああ、そうだな。」料理に手をつける。「おれ、お前が消えてしまった後、長いこと悪い酒ばかり飲んだ。どうしてやれば良かったんだろう、どうにもしてやれなかったって。ステフと一緒に飲んでいた同じ酒とは思えないくらい味が違う悪い酒をな。」話を聞いていたステファニーが、目を料理の皿から、ジャックに移し、「そうだったの。ありがとう。私のこと思い出してくれてたんだ・・・。」「そら、そうだろ。」身を乗り出す。「でも今は多少、お酒は美味しくなった?」「え?」「【飲んでる】、じゃなくて、あなた悪い酒を【飲んだ】って言った。過去形になってる。「そうだな。ずーっとグルグル考えた挙句、お父さんの会社のためになる縁談を受け入れたのかなって。だから、それをおれに言えなくて消えたのかなって思って。そうなら、何もしてやれなかったおれがステフを連れ戻す資格なんかない。愛想つかされても仕方ないよなって。ま、できれば、仕事なんか全部放ったらかして、お前を探し回りたかったけど。」(ジャック・・・。) ステファニーは知らなかった当時の気持ちを知り、切なくなる。ジャックのフォークを持つ手が止まる。ステファニーは、泣きそうになるのを気づかれないうちに引っ込める「いじめてごめん。そうだよね。食べて、食べて。」ジャックがフォークを置くと、「これ、買ってやるから。」ウエンディに目配せしてからミカエルのキャンディーを手に取りステファニーに渡す。「なんで?高いのに?」「これはな、恋が叶うキャンディーだ。」「へっ!?何、乙女チックなこと言ってるの。」ステファニーが吹き出す。ジャックは眉間にシワを寄せて「自分でも言っててちょっと違和感あるけど、とにかく、なんか叶うみたいだから。まだ決まった相手がいないなら、これ食べて、おれみたいなんじゃなくて、お前が本当に困ってること、悩んでることにちゃんと気づいて助けてくれる奴を見つけろ。」ステファニーは真顔になり、「・・・うん。分かった。ありがとう・・・。で、ジャックは叶ったの?」しんみりした表情をした後、上目遣いでそう言われ、「え?なんでそこでおれの話になる。」「ふーん。叶ってはない。」ジャックの目が泳ぐのを見逃さないステファニーに「どうでもいいだろ。でもな、こうしてステフとまさかの再会ができた。結構なご利益じゃないか?まぁ、キャンディーのおかげかどうかはわからんが自分の不甲斐なさにずっと落ち込んでたけど、こんなおれでも誰かのために何か出来るかもしれないってくらいは思えるようには変えてくれた気がしてる。力不足でお前にはしてやれなかったけど。」「そう。じゃあ、半分こしましょう。」バリっと袋を開けてステファニーがキャンディーをカウンターに散らばらせると、ジャックが「お前が全部持って行けよ。」と手を広げてスーッとステファニーの方にまとめて押す。「私はあなたより魅力的だから、半分で十分よ。あと半分であなたの、その、彼女を射止めなさいよ。」ジャックが完敗とばかりに、あえて何も言わずにため息をつくと、黙って律儀に1つずつ交互に自分側、ステファニー側にと分けて行く。分け終わって「あっ、奇数じゃないか。割り切れないとなんかイラつくな。」そう言いながらキャンディーが入っていた袋の裏を見て「グラム表示かよ。全く。」「いいからいいから。はい。」ステファニーが1個多くジャックに渡す。「ありがとう。魅力的なステファニーさん。」「いえいえ。どういたしまして。」うやうやしく返事をする。「彼氏が出来たら紹介しろよ。」冗談ぽく、でも優しい口調で言うジャックに、あっけらかんとした口調でステファニーは「結婚式の招待状を送るわ。」そう言い放った。ジャックは少し複雑な笑みを浮かべて頷きながら「・・・ああ。待ってる。必ず送れよ。」「うん。」ステファニーは身を伸ばして顔をカウンターの奥に向けて「ダニエルとウエンディも来てね。」ダニエルがなんとも言えないくしゃくしゃの笑顔で「行く。絶対行く。な、ウエンディ。」「ええ、行きますとも。」「ありがとう。じゃあ、私、そろそろ行くわ。いくら?」財布からランチ代を出そうとしたステファニーに「おれが払っとく。」ジャックが彼女の手を持ち、財布をしまわせる。ステファニーは笑って「大盤振る舞いじゃない。高いキャンディーに、ランチに。」「いいから。黙って払わせろ。先週馬券が当たった。気にするな。」ステファニーはそれがウソだとわかっていたが「それなら、ご馳走になるかな。」素直に騙されることにした。「会えて良かったわ。じゃあね。また。ダニエル、ウエンディ、ありがとうね。」ステファニーがカバンを持ち、出口で片手をあげた。ウエンディが駆け寄って、「いつでも遊びに来てね。」そう声をかけると、にっこりと頷いてステファニーは店を出て行った。

ステファニーが出て行った後の店で、ダニエルは「ジャック、泣いていいんだぞ。誰にも言わないから。」ダニエルの方が泣きそうな顔をしてそう言う。「誰にも言わないって何言ってるんだよ。なんでおれが泣くの。」「男だって泣きたいときあるさ。うん。」「泣く必要はない。あいつはおれには勿体ないからな。もっとあいつに似合った男と出会って幸せにならなきゃいけない。なるに決まってる。逃した魚が大きかったのではなくて、そもそもおれの魚じゃなかったってことだ。さ、じゃ、おれももう行くわ。」椅子から下りて立ち上がるジャックに、ウエンディが「馬券はいつものように外れたんでしょう?つけといてあげてもいいわよ。」伝票を出す。「当たるわけがない。つけても何でも払わにゃならんに変わりなし。ま、これくらいは払えるって。」ジャックはウエンディの気遣いに鼻にシワを寄せ、いたずらっ子みたいな笑みをして、札を置いた。

by kigaruni_eokaku | 2019-01-13 16:53 | 物語

自作のイラスト・物語、手作り品の紹介など。


by kigaruni_eokaku