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明日のチケット(第39話)雪雲劇場2

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「お父さんの会社はその後どうなの?」ウエンディが静かに尋ねた。ステファニーは淡々と「それなりに。沢山の人に迷惑をかけたけど、前よりはマシにはなった。少し目処も立って来た。」「そう。よかった。でもその件がなければね・・。」「ウエンディ、要らんこと言うな。」ダニエルがフライパンの魚のソテーをお皿に移しながら妻に注意する。ステファニーが明るい声で「良いのよ。ダニエル。ウエンディは私のお姉ちゃんみたいなもんだもの。ずっと私のことを心配して、なんとか良いようになって欲しいって思ってくれてたのは、よーく分かってる。」ダニエルが料理をカウンターの彼女の前において、心配そうに「そうか?それならいいが。大丈夫か。」「何が?」ステファニーは少し微笑むような顔をして問い返す。「その・・・。ジャックとは会ってないのか。」「うん・・。会えないよ。申し訳なくて・・。」「そうか・・・。すまんな。オレこそ要らんことを聞いたか。ほら、熱いうちに食べな。」「うん。ありがとう。頂きます。」と、外から声が。「ダニエル、ランチ始めたのか。暗いな。やってんなら、照明くらいつけろよ。ん?ステフ?!」タイミング悪くやってきたジャックに、ウエンディが「ランチはやってません!」カウンターの外に出て、ジャックの背中を押して店の外に出すと、「あの、今、店の中に居たの、ステフだろ?何か前と全然雰囲気違うけど。」店の前でウエンディと小競り合い。「そうだけど、あんたは今は入っちゃダメ。」地声のジャックと、小声のウエンディに、ステファニーが入り口まで出て来て「久しぶり。一緒にランチ、しようよ。ダニエル、ランチ、もう1つ」ダニエルはへの字口で、「やれやれ・・・。かしこまりました。」ジャックはステファニーの隣に腰を下ろし、「随分感じ変わったけど、似合ってるじゃないか。彼氏か、はたまた旦那さんの趣味か。」「ううん。私の行きつけの美容院の店長の趣味。」「は?」ジャックはポケットから、タバコを出して、「あ、タバコ、吸ってもかまわないか?」尋ねるとステファニーがクスッと笑い、「マナーが出来て来たじゃない。」(前はそんなこと、聞かなかった。勝手に煙をはいていたくせに。)そんなことを考えながら黙っていると、「で、いいの?だめなの?」「いいよ。別に。好きにして。」「サンキュ。で、元気にしてたのか。」「うん。病気になる暇は、なかったわね。」「ウィルはどうした。」「私が締め上げて、父のところともう一箇所、働きに行かせてるわ。我が弟ながら、ホントのバカヤローでまいっちゃうわよ。」2年ほど前、割と大きな文具メーカーを営んでいたステファニーの父親は、息子のウィルが父親に黙って会社の資金で無理な投資をして、あっという間に傾かせた。そんなことになる前から、この店で出会って意気投合して親しくしていたジャックにステファニーは相談に乗ってもらっていた。けれど、会社の状況は良くなるどころか、どんどん悪化して、合併話とステファニーの結婚話が、救世主かのようにふってわいた。ステファニーは首を縦に振るしかないのを分かりつつ、追い詰められてジャックに言っても仕方がないことを言って困らせた。「お金を貸して欲しい。」ジャックはそれは出来ないと彼女に告げた。ステファニーは言っている自分より何倍もジャックが辛いことが分かって、ある日突如彼の前から姿を消した。
その後、父の会社は、都心にあった社屋を売り払い、拠点を自分のふるさとにほど近い田舎町に移し、規模を縮小して着実に負債を減らす方向でやり直しをはかっている。ステファニーはもともと別の会社の企画営業の仕事をしていたので、その手腕を活かし今は父の会社で、自社に協力してくれるようなクライアントを開拓して歩く日々を重ねている。それは簡単なことではなかったけれど、それが、ジャックを苦しめた自分なりの償いだと思うことで力を振り絞っていた。「結婚、しなかったのか。」ジャックがタバコの灰をトントンと灰皿に落とす。「してないよ。だってそれじゃあ、反則でしょう?」「反則?」「そんな楽して解決しちゃ、いけないことだったのよ。」「楽とか、そういうんじゃないだろ。好きでもないヤツと結婚するのは。ごめんな。あの時は。」「ジャックは何にも悪くない。私があの時、言うことを間違えたよね。『お金を貸して欲しい』じゃなくて、『ジャック助けて』だけで良かった。」「ステフ・・・。おれも、おやじさんの会社なんか潰してしまえ、で良かったんだ。お前が会社をなんとか立て直す手立てを必死に考えてるのを見てたら、どうにか助けてやりたい、そればかり考えて、袋小路に入ってしまった。上司に何度も掛け合ったけど融資は許可が下りなくて、お前に一番してやりたいはずの資金調達が出来ない。致命的に情けないって思ったよ。」「ジャックは十分やってくれてた。私が素直じゃなかった。自分に出来ないことを無理にやろうとしていた。」ステファニーは目線を落とした。「ステフはやれば大抵のことが出来てしまうからな。それが良いような悪いような、だな。」ジャックはダニエルが出した料理の皿を軽く会釈して受け取り、タバコを灰皿で押し消した。

by kigaruni_eokaku | 2019-01-08 22:10 | 物語 | Comments(0)

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