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明日のチケット(第38話)雪雲劇場2

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「うん・・・。そうらしいんだ。まだキチッとは決まってないみたいだけど。」だんだんと声が小さくなるバート。「そんな・・・。」アリッサはそれだけ言うのがやっとだった。(折角、お互いの気持ちが通じたのに・・。)「ごめんね。どこへ行ってもちゃんと連絡するし、元気出して、アリッサ。」ポンポンと頭を撫でるけど、くるりと背中を向けると「早く帰らないと、ピエロさんに、怒られるよ。」半泣きの声でそう言われて、「そうだね。じゃあ・・・。」バートが行こうとしたら「やだ。帰らないで。・・私、何、言ってるんだろう。」バートはアリッサの気持ちを考えたら、とても切ない心持ちなっていた。「そうだ。ねぇ、アリッサ、お願いがある。」「・・・何?」「ワンダーランドサーカスのみんなの衣装のデザインをして欲しい。」「えっ?衣装の?」背中を向けていたアリッサが真っ赤な目のままだけど、バートの方に振り返る。「世界で活躍するファッションデザイナーを目指しているアリッサには小さなお仕事の依頼で悪いけど。」「ううん・・・。違う。お父さんもバートも、間違ってる。」「どういうこと?」「私がなりたいのは、世界とか、そういうんじゃなくて、自分の近くにいる普通の人たちが私の作った服を着て少し幸せになれるような、そんなファッションデザイナーになりたいの。学校のダンス部の友達のユニフォームとかを頼まれて、考えてあげたりしてるの。」バートはぱあっと明るい顔になり、「すごいじゃないか!!世界よりすごい。ね、考えてみてくれない?全員の分じゃなくていいから。アリッサなりに考えてみて。」「ありがとう・・。うん。やってみる・・。」バートはアリッサの目をしっかりと見て「君なら、きっと素敵なのができるよ。頑張って。今日、アリッサの思い描く未来に確実につながる“明日”を作るんだよ。」「“明日”を、作る?」「そう。明日、どうなっていたい?今日よりちょっと良い自分でいたいって思わない?」「うん。」「夢である、ファッションデザイナーになる為に、今日は何をする?何を考える?」バートが微笑む。続けて「僕は、今日より沢山の拍手をもらえる、サーカスのスターになる。その未来のための“明日”を“今日”作る。理想の未来には一足飛びには行けないけど、それがどんな所かは分かってる。行き方も分かってる。そこへ行くチケットは皆持ってる。魔法でも、奇跡でもない自分の努力でできた確実にたどり着ける“明日のチケット”だよ。僕はそう、思ってる。その、お金で買えないチケットを、使えるかどうかは自分次第だけどね。」アリッサの目から涙は消えてバートの言葉にゆっくりとうなづいていた。バートもうなづいて「お互いに頑張ろうね。」バートはアリッサから、バス停の場所を聞くと階段を降りて行った。その背中を見て立ち尽くしていたアリッサが「バート!」駆け降りて「私、頑張るから!バートを驚かせるから!」もういくらか歩いていたバートは彼女の声に振り返ると、走って戻って一瞬アリッサを抱きしめて「やっぱり家系みたい。嬉しいとこうなっちゃう。じゃあね!」軽やかな足取りで橋を渡って、やがて街路樹の向こうにその姿は見えなくなった。アリッサは胸のあたりで広げた両手のひらを大事なものを受け取る時のようなカタチにして、自分の夢に続く明日のチケットがそこにあるかのように握りしめた。

翌日の昼時、ダニエルの店では店主のダニエルと、おかみさんが店の掃除をしていた。「ウエンディ!」20代半ばくらいに女性が入り口からひょいとおかみさんに声をかけた。「え?ステファニー!?久しぶりねー。髪型変わって見違えちゃった。元気にしていたの?」「ええ。元気よ。ダニエルとウエンディも元気だった?」ダニエルが髭面の顔をくしゃっとさせて笑い「俺たちは、美味しい酒を飲んで、みんなの笑い顔見ているからいつも元気さ。ははは。何か食ってくか。」「え?いいの?ランチやってないんでしょう?」「やってないだけで、食材はあるから。さぁ、さぁ、入れ。」「ありがとう。」ステファニーがカウンター席に慣れた様子で腰を下ろして「ジャックは、どう?飲みすぎてない?」ウエンディが「うん。最近はちゃんと歩いて帰れるくらいで、飲むのをやめてるから。」苦笑い。「それにこの頃はこれよ。」ミカエルの高い飴を指差す。いつぞやソフィアにあげていた方の、宝石みたいなセロファンに包まれた方のキャンディ袋が、二人の目の前にあった。その値段を見て「高っ!」ステファニーが驚きに思わず大きく開けてしまった口を左手で押さえる。「綺麗だけど、すっごい高いわね。こんなお菓子をジャックが?」「うん。タバコ吸えない所に仕事で行った時の口寂しさにたまに買ってるわね。最初は酷く酔ってた夜に買ってって、ボンヤリお会計済ませてったもんだから、朝起きたら財布の中身が減ってる!って、驚いたらしくて、朝っぱらから、叩き起こされて『おれ、昨日何飲んだ!?』って。」ウエンディが楽しそうに吹き出して笑う。「相変わらずね。」ステファニーの方は少し寂しげに笑った。

by kigaruni_eokaku | 2019-01-06 15:56 | 物語 | Comments(0)

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