2018年 12月 26日
明日のチケット(第35話)雪雲劇場2
アリッサはバートと知り合って、特殊で高度な技術でのパフォーマンスの団員さんたち、たくさんの動物たちの面白く見事な演技を見ていると、初めて見た時とは違う気持ちが芽生えていた。一生懸命技を磨くこと、動物を根気よく調教したりすること、本番に間違うことなくお客さんを楽しませるレベルまで持っていく、様々な並大抵でない努力の積み重ねによってこの夢みたいなエネルギッシュな世界が出来上がっているのだと感じていた。
全てのプログラムが終わり、盛大な拍手に包まれて団員がみんな退場して行く中、マックスがさりげなくアリッサに駆け寄り、「終わったら、キャンディー屋の前にいて。」そう言ってウインクすると去って行った。(キャンディー屋の前?)アリッサがマックスの伝言通りに外へ出て、キャンディー屋の前に行くと、ティムとソフィアが片付けを終えて、周囲を掃き掃除していた。「こんばんは。」ソフィアが挨拶して来たので「あ、はい。こんばんは。」緊張気味にアリッサが返事をするとティムが「おねえさん、バートのファンなの?ううーん!」そこまで言ったところでソフィアが後ろからティムの口を押さえてそれ以上喋るのを制止して、アリッサに苦笑い。じきにバートが着替えて出て来た。「アリッサ!」「やっぱりー!」ティムが指差してそう言うのをソフィアが肩を抱えて引きずりつつ「子供は寝る時間!今日もおつかれっ!ティム、行くよっ」テントの方へ行った。
「見にきてくれたんだ。ありがとう。」アリッサはマックスがバートに自分の事を伝えてくれたんだとわかった。「ありがとうは、私の方。」「どうして?」「すごく感激した。バート、すごい。」「ほんと?それは嬉しいな。まだまだだけどね。」屈託無く笑うバートにアリッサが「あのね、ハイタッチ、してほしいの。」両手を上げる。「え?」「私の席は、前でも通路側でもなかったから、団員さんとハイタッチとかできなくて、羨ましかったの。」クスッと笑ってバートが「なるほど。いいよ、じゃあ、ハイタッチ!」パチンと両手を合わせて二人で笑い合うと、そのまま彼女の両手を握った。思わず彼女を引き寄せて抱きしめてしまいそうになるのをぐっとこらえた。
by kigaruni_eokaku
| 2018-12-26 20:58
| 物語
|
Comments(0)