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明日のチケット(第22話)雪雲劇場2

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バートたちが演技を終えてバックヤードに戻ると、興奮冷めやらずの中、三人で輪になり肩を組んで、「ノーミス!やったな!バート!」ダンがバートの髪をかき回した。ケビンも喜んで、「大したもんだよ。本当に!」ハハハと笑う。指導にあたっていた団員の一人の、ピエロのマックスも忙しそうに走りこんで来て「バート!ファンタスティック!」グッド!というように親指を立てキュッと笑って背中を叩くと、次の段取りにまた軽やかに走って行った。「あ!マックス!」バートがキョロキョロしてるうちに行ってしまい、今度はエディーが「デビュー戦としてはパーフェクトだったな。これからも頑張ってな。」ディアナも「おめでと。良かったわよ。」ニッコリすると彼らもまた、準備に戻る。外にいたソフィアもバックヤードに駆けつけて「バート、すっごいよ!ミスもなくてタイミングもバッチリで!」ずっとバートが熱心に練習していたのを誰よりも見てきたので思わずバートにハグして泣いてしまうと、バートも緊張の糸が緩んだのかもらい泣きしてしまい「ソフィア〜、ありがとう。う〜。」祝福してくれたソフィアを抱きしめた。遅れて、売店のティムにバックヤードに連れてきてもらったジャックは、「お前は、大成功したのに、泣いてんじゃないよ。」バートの額をペシっと叩く「あ、痛っ。」バートがソフィアから離れると、ソフィアに「やっぱり要るじゃないか。」さっき彼女から返してもらったハンカチを渡そうとすると、「今日はいいの!これは良い涙だから。いくら流してもいいの。私、バートがすごい頑張って来たのを知ってるから、成功して本当に嬉しいの。」ジャックはやれやれという顔をしてから、穏やかに笑ってソフィアを見ていた。

バートの母、メアリーはケイトと一緒に一番後ろでバートの様子を見て、これ以上出来ないくらいの拍手をしていた。ケイトは感極まり涙するメアリーに、「バートはよくやりました。目立ったミスはありません。手足のさばきも綺麗でした。デビューには上出来です。」ケイトも以前は空中ブランコや、馬上パフォーマンス、高所でのバランスパフォーマンスなどを器用にこなしていたプロ。まずは母親の目よりそちらの目で厳しく見ていた。「いかがでしたか。お母さん。」メアリーは首を横に振りながら、「ただただ心配で、何が何だか。無事終えてくれてホッとしています。改めて、あの子をお客さんの前に立てるまでにご指導をしてくださってありがとうございます。」そう言ってから続けて「きっとあの子にはあなたと、ご主人との血が流れているから才能があったのでしょうね。」うつむいてから顔を上げ、ケイトを見る。ケイトはちょっと厳しい表情になり、「そんな単純なことではありません。それだけで人前でお金を頂いて行うレベルのパフォーマンスができるものでは決してありません。バートが一生懸命、日々自主トレーニングをして、先輩たちからの特訓に謙遜な気持ちで一途について行く、その精神力や、いつも前向きに進もうとする、素直で強い心こそ大事なのです。それはあなた方ご夫婦の育て方の賜物です。それこそがエンターテイナーとして、お客様を心から楽しませる演技につながるのです。」メアリーはハッとした顔でケイトを見てからもったいない言葉だという照れもあり、落ち着きのない様子で「何と申し上げていいのか・・・。あ、ありがとうございます・・・。」「メアリーさん。お願いがあります。」ケイトはテントの外にメアリーを促し、メアリーも彼女に続いてテントの外に出た。「あの子を・・・。」言いにくそうにケイトが重たい口を開き、「あの子を、私たちの息子として、籍を返して頂けませんか。アレックス・ポートランスに戻してほしいのです。」メアリーは分かっていたし覚悟をしていたけれど、いざとなると即答できずにいると、ケイトが「ご主人とよくご相談なさってください。ただ申し上げておきたいのは、あの子と縁を切って、二度と会わないでくださいと言っているわけではありません。私にとっての、形だけのけじめのようなものかもしれません。もちろん、最終的にはバート本人が決めることだとは思いますが。」メアリーはケイトの申し出に「はい。」と一言それだけ言って、深く頷いた。

by kigaruni_eokaku | 2018-10-27 11:28 | 物語 | Comments(0)

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