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明日のチケット(第17話)雪雲劇場2

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メアリーの涙が床に落ちた。声を震わせつつ「私はフラフラと街へ出て、子供とよく来ていた公園で、すぐそばの子どもたちが発している楽しげな声を、まるで別世界のように遠くに聞きながら森の方へと行くと、赤ちゃんの泣き声がしました。私は発作的に走り出して声のする方へ行っていて・・・。草をかき分けて、気付けば・・、あなた方のお子さんのいる部屋にいました。ちょうど私の子供と同じくらいの赤ん坊が、目の前でむずがって泣いていました。そっと抱き上げると、懐かしい香りがして、泣き止んで私に身を預けるその子にたまらなくなり、メモを残し・・・連れて行きました。」ジムは深いため息をつき、「何てことだ・・・。」メアリーは続けて、「おじは、私が赤ん坊を連れ帰ると、そんな事をしてどうするんだと動揺して、私を叱りつけ、早く元の場所に返して謝罪しなさいと言っていましたが、泣きくれていた私が子供を絶対に離せないとおじには引き渡さないと、もし私から奪うなら死ぬと言い続けていたら、黙ってしまい、警察と役場の人に自分の医院に来た、身元不明の外国人が病気の子供を置き去りにしたので、姪の子として籍を入れたいと嘘をついてこっそりと養子にしてくれました。・・そんな事をしたっていつかは遅かれ早かれ夫にばれてしまうのはわかっていましたが・・・。」「それで、御主人は、ご存知なのですか?」メアリーは首を横に振ってから「いいえ、まだ、知りません・・今回、こちらに来させて頂くにあたり、主人に真実を書いた手紙と離婚届を残しました。団長さん、どうか、私を警察に引き渡すなり、裁判を起こされるなり、そちらの良いようになさってください。なんでもおっしゃる通りに致します。」ジムはメアリーの覚悟をしっかりと感じながら、「つまりは、あなたが連れて行って育てたのが、我々の息子だと、そうおっしゃるわけですね?と、と、いうことは、それは、バート、ですよね?」ジムは立ち上がってウロウロとして、くせ毛の髪をかき回し、「あの子が、私たちの息子、ということですか?!」「はい・・・。そうです。」「何と言っていいのか。・・・ずっと思っていました。子どもを連れ去った犯人に会えたら、我々の怒りと悲しみを全部ぶつけたいと心の中だけですが、よく思っていました。」メアリーは頷いて「当然だと思います。どうぞ、そうなさってください。」ジムは座り直し、「だけど、どうだろう、今、私は、そんな事より、バートが、みんなに愛される良い青年になっていて、私も可愛くてしょうがないと思っていて、生きて会えただけでなく、サーカスでパフォーマンスをしたいと、やって来た、賢くてまっすぐなあの青年が、自分の息子だったことに、よかった、って思っています。私たちはあの日からものすごく苦しんだのです。団員の前では見せないようにしていました。本当に姉の所にアレックスがいるつもりで暮らすことに徐々に慣れて行きましたが、長女のディアナは、私たちに気を遣って、子供らしい明るさにどこか影があったりもしましたし。心配もしました。次女のソフィアが生まれ、ディアナは自然な明るさを取り戻して、一生懸命世話をしてくれました。私たちは、そうして暮らして来ました。あなたが連れて行かなければ、そこにアレックスもいたでしょう。だけど、いなかった。」「はい。」「あなたは、私たちからアレックスを奪ったけれど、バートという素晴らしい息子にして返してくれた。ここに来たいという息子を来させない選択も出来ました。でも来させてくれた。なぜですか。」「あの子が先日帰って来た時に、ガラス細工のオルゴールをお土産にくれました。それを見たときに、もうこれ以上このままにはできないと、思いました。赤ん坊のあの子が寝ていたベッドによく似たオルゴールがあった事を思い出したのです。私はオルゴールに犯した罪を責められました。」「グリーンさんのオルゴールですね。」今はディアナの娘、サラの所にある。「小学生の頃に、私は連れて行く事をためらったのですが、主人が行こうと出掛けて、サーカスを見た時にあの子が目をキラキラさせて、『僕もあんな風になりたい!サーカスに入りたい』と言った時には愕然としました。これは血が導く運命だと。恐ろしく、なりました。その時点であの子をお返しすべきだったのに、私はあの子が愛しくて愛しくてできませんでした。何も知らない主人は、幼い子の一時的な憧れだと本気にしていませんでしたし、教育熱心でしたから、キチンと高校を出たら好きにしなさいとずっとあの子に言っていました。そうして延ばし延ばしにして来たけれど、バートが高校を出て、サーカスに入る時にはきっと別れなくてはならないと覚悟していました。長い間申し訳ありませんでした。」メアリーは深々と頭を下げると、また後から後から涙が込み上げて来ていました。
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by kigaruni_eokaku | 2018-10-09 23:27 | 物語 | Comments(0)

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