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明日のチケット(第15話)雪雲劇場2

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「アレックスがいない?!いなくなったって、アレックスはまだ歩けないんだぞ。」ジムは倒れそうになるケイトの両肩を持って支える。ジムとケイト夫婦には当時、長女のディアナの次に生まれた長男アレックスが1歳を迎えたところだった。ケイトは頭を抱えて座り込んでしまい、「私が、目を離したのが悪いの!」泣き続けた。「落ち着くんだ、ケイト。団員みんなにちゃんと聞いてみなきゃ。誰かが面倒を見ているかもしれないだろう。」ジムはケイトのそばで心配そうに見ていたディアナとマックスに「ケイトを頼む。」そう言って、テントを出て、当時の団員一人一人に尋ねて回ったが、残念ながら、誰もアレックスの事を見ていた者は居なかった。ジムは絶望的な気持ちに苛まれたけれど、妻を支えなければいけないのにそんなことでどうするんだと自分を奮い立たせ、テントに帰ってきて「ケイト、しっかりして。とにかく、一度部屋に戻って体を休めて。さ。一緒に行こう。」優しくそう言って、泣きじゃくるケイトを連れて自分たちの部屋に戻ったが、やはりアレックスの姿はなく、ベビーベッドは空っぽだった。ジムはベビーベッドの中のさっきまでアレックスがかけていたキルトを見つめると涙が出そうになるのをこらえながら何となく枕元のオルゴールをそっと持ち上げると、パサリと紙切れが落ちた。《大切に育てます ごめんなさい 》それだけ書かれたメモだった。「何だ・・・、これは・・・。」ケイトがジムの呟きに「どうしたの?」横になっていたソファーから起き上がり側に来た。「ケイト・・・。これ・・・。」ケイトに見せると「はぁっ!」両手を口に当てて震える。「誰かが・・・、アレックスを連れ去った・・・のか・・・。」ジムはがくりとこうべを垂れた。ケイトが床に座り、大声で「ごめんなさい!ジム!ごめんなさい!私が、私が、一時でも目を離しさえしなければ、アレックスはこんなことにはならなかったのに、ごめんなさい。何度謝ったって足りないのは分かっているけど、ごめんなさい!あああー!」激しく泣き崩れた。「ケイト、そんなことは言わなくていいから。お前のせいじゃない。」彼女を抱きしめても、震えは止まらない。「大丈夫、きっと大丈夫だから。アレックスは。」ケイトは首を横に振って、ただ泣き続た。ジムはメモを見つめ、(大切に育てます・・・)心の中でもう一度読んだ。「ケイト・・・、横になって。」支えながら、ベッドに連れて行き、横にならせると、ジムは穏やかな声で「あのね、紙には、大切に育てますと書いてあるんだ。私たちのアレックスを、大切に・・・育てると・・。」ジムは涙が出そうになるのを我慢して声がちょっと変わる。「ジム・・・。」ケイトは夫の手を握り、一緒に涙を流し、「どこかで、元気に、している・・って、こと・・・?」声を絞り出し、そう言うとジムも「ああ、そう、そうだ・・・。」妻の言葉にかすかに笑みを浮かべようとしていた。
二人のところに、マックスと、もう一人の先輩ピエロのゴードンが一緒にやって来て、「団長、早く警察に届けましょう。みんなも町に貼り紙したりして、手分けして探すって言ってます。」そう言ったが、ジムは首を横に振った。「警察には届けるが、町の人には知らせないでくれ。」ゴードンが団長に詰め寄り「団長、なぜ!?」「・・・せっかくのサーカスの興行が台無しになる。この町の皆さんは我々がやって来るのを楽しみにしていてくれたんだから。」ジムはある大きな決心をしていた。

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by kigaruni_eokaku | 2018-10-04 21:06 | 物語 | Comments(0)

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