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明日のチケット(第14話)雪雲劇場2

b0314689_21471982.jpeg数日が過ぎて、バートの母親が団長に挨拶にやってくる日が来た。夜公演を見る予定の母親は、それには随分と早い時間にサーカスに到着した。入り口で掃除をしていた居た数人の団員の中にソフィアとディアナがいた。「すみません。」ディアナが近くにいたので「はい、何か。」応対すると「バートの母のメアリー・フォックスです。皆さんにはいつもお世話になって。ありがとうございます。団長さんはいらっしゃいますか。」「えっ!バートのお母さん?」横からソフィアも。ディアナがソフィアをちょっとたしなめるそぶりをしてから、「はい。おります。ご案内します。私たちの方こそ、バートにはお世話になってますよ、いつも。父が、お母様にお会いできるのを大変楽しみにしておりました。どうぞ、こちらです。」ソフィアにホウキを渡すと、ディアナはバートの母親と団長の部屋の方へ歩いて行った。ソフィアが「バートに教えてあげなきゃ!」走り出そうとすると、腕を掴んで、仲間の団員が「ソフィア、バートはただいま特訓中。声かけても無理よ。怒られるわよ。」「あ、そっか。ま、昼休みにでも会えるわね。」「そうそう。頑張ってお母さんの前でいいところ見せなきゃ。」
「お父さん、バートのお母様がいらしたわよ。」「失礼します。」母親は団長の部屋に。「ああーどうも。ようこそ。わざわざお越し頂いて、ありがとうございます。」団長は明るい笑顔と大きな声で迎えた。対照的に、バートの母親は神妙な面持ちで、時折微笑するといった様子だった。「バートが大変お世話になっております。ありがとうございます。」母親が深々と頭を下げると、団長はニッコリして「本当によく頑張っていますよ。細かい事に気がついて、真面目で明るい。私がいつも元気をもらっています。」母親はホッとした表情をしながらも恐縮した様子でまた頭を下げた。「団長さん・・・。今日は大切なお話があってまいりました。」母親は緊張して声をかすかに震わせながらもしっかりとした口調で「今から19年前、ノースフローラの町に来られましたよね。」団長は、町の名を聞くとその顔から笑みが消える。「ノースフローラ・・。」低い声で母親の言葉を繰り返した。母親は「ノースフローラの町で興行された時に起こったことがありますね。」団長はますます真剣な顔になり、「あなたはどうして、それを・・?」
19年前、ノースフローラという小さいけれど、活気のある町で、サーカスの興行を行なっていた時、団長夫妻は大変な事件の中心人物になった過去があった。ノースフローラでの興行中、団長夫人のケイトは子育て真っ最中だった。長女ディアナは6歳になったばかり。居住スペースの通路を走り回っているのが気にかかる。次に生まれた男の子はまだ1歳。むずがって泣いていた。「ちょっと待っててね。」ケイトは枕元のガラス細工のオルゴールを回して鳴らすとハウスの外で「ディアナ、マックスの所に行こうね。マーックス!」大声をあげるけど、どうやら側にいないようでマックスの返事はない。「仕方ないわね。ディアナ、おいで。」手を取ると足早にテントの方へ行く。入り口でマックスが板に乗ってジャグリングの練習をしていた。「マックス、悪いけれど、少しの間、ディアナを見ていてくれない?」マックスは板から降り、ボールを全てキャッチすると、「オッケー。ディアナ、行こうね。こっちおいで。」「うん。」テントの中に入って行った。
ケイトは慌てて部屋に戻ると、泣き声がやんでいた。「ただいま。あら、泣き止んだの?良い子ね。お待たせ。」ベビーベッドを覗きこむけれど、息子はいない。「えっ?アレックス!?」ケイトは動転する気持ちを抑えて外へ出て、居住スペースの通路を見てまわる。(泣いていたから誰かがあやしてくれてるんだ、そうだ、きっと。)でも、誰も息子をだっこしているような者はいない。もう一度テントまで行き、中を駆け回り、探すが誰の側にもいない。団長になったばかりのジムが動物たちに演技の練習をさせていたが、妻の様子を見て「どうした、ケイト。」一緒にいた団員に動物を任せるとケイトのところに来た。「ジム、アレックスを、誰かこっちに連れてきてない?」「いいや。なんで?」「アレックスがいないの・・・。」ケイトが堰を切ったように泣き出した。

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by kigaruni_eokaku | 2018-10-03 22:05 | 物語 | Comments(0)

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