気軽に始めるイラスト!楽しもう~

kigarunieo.exblog.jp
ブログトップ

月と花【第6話】*雪雲劇場*


b0314689_00053180.jpeg少年の両親は大貧しく、まだ生まれて間もない赤ちゃんだった彼を、育てることができず、湖に連れて行き、置き去りにしてしまいました。湧き水も、小さく波もあるこの古い湖は、水辺に置かれた赤ちゃんをチャプンチャプンと舐め始め、夕刻には顔の辺りまで水がかぶり始めました。しばらくは大きな声で泣いていた赤ちゃんでしたが、日が落ちていく中で眠るように水面に揺れ始め、やがて水の中に。時折小さな泡がぷくりと生まれて、魚たちが横を過ぎて行きました。そのうちに小さな泡すらも一つも出なくなった赤ちゃんは、青い青い湖に宝物のように抱かれて沈んで行きました。
と、急にぼんやりと辺りが明るくなり、雲が切れて月明かりがさしました。静かに動かなくなっていた赤ちゃんが、水の中でゆっくりと目を開けました。するとそっと水が引き、岸の柔らかい草の上に赤ちゃんは寝ていました。不思議なことに、明るい茶色だった髪は、湖と同じ青色に変わっていました。優しい夜風が彼の着ているものを乾かして、濡れていた髪もふんわりとしています。首をかしげ、月を見上げていると、心の中にだれかが話しかけて来ました。「ずっとここにいなさい、私の子どもよ。」優しいことを言われているのはわかったけれど、赤ちゃんには意味はわからず、そのまま、柔らかい葉っぱの上に眠ってしまいました。
それから幾年か経って、少年は自分の命を救って、いつも語りかけ、育ててくれたのは、月だとわかりました。月は賢く成長した少年に、彼が実の両親にされたことを話して聞かせました。そして、「私は、神さまからこの星の人たちの生死の瞬間を見届けるようにと任せられて、命の出づるさまと、消えるさま、そして水をつかさどっている。でも私には本来、生死を見届ける力、水をあやつる力しかないのです。でもなにも悪いことをしたわけでもない、小さなあなたが水に沈んで命を失うのを見過ごすことがどうしてもできなかった。あらん限りの力であなたを助けた。私があなたを助けたのは、きっと幻のようなもの。だからあなたは私が空にいる、夜の世界でしか存在できないのです。ここでずっと静かに暮らしていなさい。そしてこの秘密は誰にも言ってはなりません。」少年は最後だけ厳しい話し方になった月に「なぜ?話してはいけないの?」恐る恐る尋ねました。「あなたの秘密を聞いた者は、死んでしまうからです。」少年は今より幼かった当時そう言われた時には、漠然と心に刻んだだけで、その約束は何も難しい事だと感じたことはなかったのでした。
それが、少女と出会って、一変してしまいました。
〜つづく〜

[PR]
by kigaruni_eokaku | 2018-08-03 18:39 | 物語 | Comments(0)

イラスト教室のレポート 自作のイラスト、手作り品の紹介など。


by kigaruni_eokaku